最近の医療現場を見ると、昔に比べて様々な変化が見られるようになりました。まず、余命宣告をする医師が減ったように思います。例えば、昔であれば余命が残り半年などのように具体的な期間を提示することが多かった用に思います。しかし、最近ではガンの場合は5年生存率何パーセントなどのように統計的な説明をする場合が多く、余命宣告をするケースは本人の意思を尊重した上で伝えられるようになっています。
それから、緩和ケア病棟を置く病院が増えてきました。緩和ケア病棟とは、病気の改善を目的としたものではなく、死を迎えるまでの苦痛を回避することを目的とした病棟です。このような緩和ケア病棟では、病気の回復自体を望むことは基本的にはできません。しかし、穏やかな気持ちで死を迎えることができるため、患者の意思及び尊厳が重視しされ、高齢化社会ではニーズが高まっています。
ですが、この2つの傾向には深刻な矛盾があると言えます。余命宣告がなされない場合には、自分に残された時間がどれ程あるのか判断することができません。そのため、間近に迫った死を避けることができない患者が、それに気付かずに苦しい闘病生活をするケースも出てきているからです。
また、本来治る可能性があっても、誤って緩和ケアを希望してしまった場合には、本来治療をすれば延命ができたにも関わらず、死を迎えることになってしまった事例もあるようです。この判断は医療現場においては最も難しいものの一つになっています。そのため、医師及び患者が適切な判断ができ、納得した結論を出せるような体制を整えることが現状の課題になっています。